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「 e-japanで電子政府、そのとき社会保険労務士は?」
      〜『伊藤労務事務所』〜
厚生労働省では、インターネットを利用してオンラインで各種申請・届出等手続が行える「電子申請・届出システム」の構築を進めているのをご存知ですか?なんと、2003年3月末から407手続のオンライン受付を開始し、15年度末までに残りの社会保険や労働保険などほとんどすべての申請・届出等手続のオンライン化を行う予定なんですよ。事業所によっては、申請をフロッピーで行っているところもあるかもしれませんが、今回はネット経由で行われ、何かを郵送するとか、印鑑を押す等の手続きは不要になります。
e-japan政策が進み、電子政府を目指して数々の新しい取り組みがなされる中、企業と厚生労働省を結ぶキーマンとなるべき社会保険労務士もIT化を余儀なくされています。今回は、大阪府中小企業IT化推進協議会の2002年度活用支援事業として行われた「士業のIT活用」の実例をご紹介します。


    セキュリティの観点から見て

大阪府中小企業IT化推進協議会には、2003年12月1日現在、46社の事業者会員が加入しています。その中に、社会保険労務士向けのASPサービス「社労夢(シャローム)」をサービスしている株式会社エムケイシステムがあります。エムケイシステムが展開する「社労夢」システムは、現在1,100の社会保険事務所で導入されている業界トップシェアを誇る実務用ソフトです。
エムケイシステムの三宅社長は、社会保険や労働保険の電子申請についても確固たる信念をお持ちです。「個人情報保護やデータ保全、つまりセキュリティの観点から見て、各社のデータを合法的に運用できるのは、社会保険労務士しがない。だから、サーバーも社会保険労務士事務所に設置しなければならない。」とおっしゃいます。「だから、今回の活用支援事業では、実際に社会保険労務士事務所にサーバーを設置することが可能なのかどうかを試すものでした」

    実際に運用できるかどうかは

一口にサーバーを置くといっても、簡単なことではありません。ハードウェアとしてのサーバーを設置しても、利用できなければ何にもなりません。そこで、「パソコンのプロがいない普通の顧問先を選び、本当に使うことができるかどうか」にテーマを置き、実験は始まりました。サーバーの設置先は、かねてよりエムケイシステムと親交のある「伊藤労務事務所」が主催する異業種交流団体である「近代労務管理センター」に決まりました。
こうして、「社労夢」シリーズのひとつである「給与計算ASPサービス」を会員企業の中の5社に対して導入していったのでした。




e-japanの大合唱の中、各種申請手続きが電子化されようとしています。そんな中で、大阪府中小企業IT化推進協議会の平成14年度活用支援事業としてひとつの社会保険労務士事務所が実験に取り組みました。






    伊藤労務事務所

伊藤労務事務所は、生野区に事務所を構えて40年、中小製造業に囲まれる立地です。伊藤労務事務所が主催し、昨年労働保険事務組合として認可された「近代労務管理センター」には、自然と中小の製造業の代表が集まりました。「今までは、社会保険労務士が個人のノウハウやカリスマ性などを売りにして、各顧問先から得た信頼をバックに『紹介・口伝え』により顧客を増やしていくことができました。私の時代はこのやり方で十分にやっていけるかも知れないが、次代を担う者のためには今の時代にあった新しいサービスの提供方法を構築しておく必要があった」とは社会保険労務士 伊藤隆所長の言葉です。「今回、エムケイシステムの三宅社長からお話を頂いたときには、正直やってみたいけれど、実際にできるんやろうかと不安がいっぱいでした」とおっしゃるのは社会保険労務士の万田さんです。「何といってもうちの顧問先は中小零細の製造業が多いですし、自分達もパソコンの専門家ではないですし。でも、これからの自分達の仕事を考えたとき、情報化は避けられません。

それならば、顧問先との情報のやりとりをインターネット経由で行うという事業は、ぜひともやってみなければならないものと感じたのです。また、そうすることで、所長の考える次世代のサービスにもつながると思いました。」こうして、今回の活用支援事業の取り組みが始まりました。

    個人の情報を預かるということ、サーバーを預かるということ

今回のサーバーは、伊藤労務事務所内に設置されています。これは、法人内の個人情報を正当に預かることができるのは、社会保険労務士だけであるという考えに基づいています。しかしながら、サーバーを運用するというのは、コンピュータ関連の会社ではない社会保険労務士事務所にとっては難問です。「たしかに、ファイヤーウォールやウィルス対策ソフトなどでがっちりと守られたサーバーではありますが、やはり不正アクセスや情報漏えいなどに対しては、どこまでやっても十分と感じにくく、勉強の日々です。」とは、所長の伊藤隆さんのご子息である伊藤淳さん。淳さんは、普段からインターネットやパソコンに詳しく、今回の導入にあたっては、運用・導入担当者となり活躍されました。この淳さんの存在があったからこそ、導入が実現したことは言うまでもありません。先駆けとなる取り組みには、やはり「IT技術に明るい人材」が不可欠だったのです。

個人の情報を預かるということと、情報の置き場所であるサーバーを預かるということは、切り離すことができません。顧問先に安全なデータ保全を約束することは、今まで紙媒体であった書類がコンピュータのデータに変わっても、しっかり保全していくことを示します。そのとき問題になる人材育成について、それぞれの事務所がしっかりと取り組んでいくことが肝心です。「人材については、内部の人材を育成する方法もあれば、個人情報等の守秘義務外の技術的な部分に外部のスタッフの力を借りる方法もあると思います。うちはたまたま淳くんが居てくれたので助かりました。でも、それぞれの事務所がそこに合った方法を見出していけばいいのだと思います。」という万田さんの言葉に少しほっとされる先生方も多いのでは?




e-japanの大合唱の中、各種申請手続きが電子化されようとしています。そんな中で、大阪府中小企業IT化推進協議会の平成14年度活用支援事業としてひとつの社会保険労務士事務所が実験に取り組みました。顧問先のデータを確実に保全するため、会保険労務士事務所にサーバーを置き、顧問先からインターネットで直接データを入力してもらう今回のシステム。さて、どのように導入されていったのでしょうか。






    既にインターネットにつながっていること

今回導入するシステムは、エムケイシステムがサービスを行っている「社労夢給与計算ASPサービス」です。これは、給与計算に必要な基礎データを画面から入力するだけで、最新の社会保険や労働保険の算定基準に沿った給与が計算でき、給与明細書を作成することができるシステムです。このシステムを利用するために必要な設備は、インターネットに接続されたパソコンと、そこから印刷ができるプリンタです。導入先を選定するにあたり、社会保険労務士の万田さん、技術担当の伊藤淳さん、エムケイシステムの三宅社長は、次の様に考えました。『できるだけパソコンに精通しておらず、なおかつ既にインターネットに接続されたパソコンを持っている会社で、給与計算に何らかの課題を抱えているところ』
これは、一般的なユーザとして一番多いパターンで、システムを速やかに導入できる環境にあり、給与計算システムの導入動機があるという意味でした。

    お願いしてみると

こうして選定したユーザ先に、システムの説明と導入のお願いに回りました。すると、意外にもそこで出た質問は、「本当にデータは安全なのか」というものでした。「自社のデータを、あらかじめ事務所のサーバーに保存しておき、変更データのみを、インターネットを介して送信、処理結果を受け取るというASPシステムについて説明すると、決まって皆さんが質問されるのが、途中でデータ漏洩などの心配は無いのかということでした」と万田さん。「途中の道は暗号化されたデータが行き来しているので、万が一読まれても何のことかわからないんですよ」と説明して、やっと理解していただけたそうです。また、今回のシステムは、実際のデータを入力する部分は、数値データだけの入力で、それが何の数字なのかという見出し部分についてはサーバーへと送られません。それもあり、より安全な運用が可能なのだそうです。
インターネットに関するいろいろな事件事故が報告される昨今。お客様もその怖さについては実感をお持ちなんですね。

    特に新しい設備は不要

こうして、2003年3月、いよいよ5社でシステムの利用がはじまりました。ASPシステムの利点は、インターネット接続ができるパソコンがあれば、他には何の導入作業も不要なところです。今回の「社労夢:給与計算サービスASP」を実際に利用するために必要であった前準備は、
【サーバー側】
・社員の基礎データをサーバーに登録すること
・システム利用者へのID・パスワードの発行
【利用者側】
・システム利用のためのユーザIDとパスワードをもらうこと
・プリンタとの接続を確認すること
ぐらいで、これはどんなシステムを利用するときにもあることです。
また、月額料金にて利用できる点もお手軽です。ともすれば固定資産計上まで必要なシステム導入も、こういう月額利用料金方式だと経費で済みますね。




顧問先のデータを確実に保全するため、社会保険労務士事務所にサーバーを置き、顧問先からインターネットで直接データを入力してもらう今回のシステム。さて、導入後はどうだったのでしょうか。






    思ったよりも簡単に慣れる

2003年3月、いよいよシステムの利用開始です。給与計算という性格上、毎日入力が発生するというものでなく、給与計算の締日以降に作業が集中します。そのため、何か問題が発生しても、次に行うまでに1ヶ月ほど間が空いてしまい、なかなか慣れないのでは?と予想されました。「始めのころこそ、何でうごかへんねん、何で印刷でけへんねんとの問い合わせがありましたが、その殆どは単に使い方に慣れていないために起こった問題であったり、インターネット上の印刷にまつわる問題であったりと、すぐに解決できることでした。3〜4ヶ月、つまり、3,4回操作していただく内に落ち着き、運用開始から半年以上経った今では、殆ど運用上の問い合わせはありません」と技術担当の伊藤淳さんはおっしゃいます。
「これだったら、もっとたくさんの会社さんに導入いただき、社会保険労務士ならではのサービスを提供したいと考えています」とは社労士の万田さん。システム利用の立ち上がりの良さに、今後の展開への自信が垣間見えました。


    社労士だけではなく

元々、顧問先の親睦団体としてスタートした「近代労務管理センター」には、顧問先の数々のリクエストを満たす中、数々の士業との提携が実現しています。「弁護士、税理士、司法書士など、いろいろな局面でプロの力が必要になっても即時に対応できるよう、ブレーンが居てくれます。こういう資格のある『士軍』が、それぞれの会社内の個人情報をしっかりと管理し、具体的な業務としての例えば給与計算を運用するというのが、今回の取り組みで自分達が行っていることなんだと職員も実感したようです」と伊藤所長。
つまり、社労士の仕事の媒体が紙からデータに変わっただけでなく、サービスの幅を拡げる契機にもなっているということ。「例えばインターネットを業務に使って頂くということがきっかけで、自社のネットショップ開設にまで発展する顧問先が出てこないとも限りません。私達だけじゃなくて、顧問先にとっても、自然にIT化が進んでいくというきっかけになってくれると信じています。」



これからの社労士の仕事は何なのか。
近代労務管理センターという新しい団体を通して伊藤労務事務所が提供するサービスは
展開・転換を図っていくことでしょう。
これは、他の社会保険労務士事務所をはじめ、士業と呼ばれる皆さんにとっても
大きなひとつの参考事例となることでしょう。



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