.
「食料品小売業の生き残り戦略!」

      〜魅力ある商品を共同購入、岸和田食料品小売業協同組合〜

食料品小売といえば、30代後半以上の方ならば、「いちば」をご存知だと思います。買い物かごをひっかけて、エプロン姿で買い物に出かける母の姿に懐かしい思いが甦りますよね。八百屋さん、肉屋さん、豆腐屋さんと、一軒一軒まわっていくスタイルがいつの間にやら失われ、スーパーとコンビニばかりになってしまいました。しかしながら、今も地元で食料品小売業を営む商店は存在しています。スーパーやコンビニが林立する中、独自の生き残り戦略をかけて奮闘する食料品小売業の取り組みを、大阪は岸和田からご紹介します。


    岸和田のITキーマン

南海電車の岸和田駅を降り、JRの方向に伸びる幹線道路。その道に平行して、旧道があります。岸和田の旧市街と呼ばれるその地区に、岸和田商工会議所は建っています。昔から「だんじり祭り」で有名な岸和田は、それだけ地縁の強い土地柄でもあります。商工会議所が果たす役割も、新興の土地とは違い、地元密着型のサービスです。そんな商工会議所には、やはり地元の人からの厚い信頼を受けるITキーマンが存在します。その名は坂田さん。もともとITサービスの会社を脱サラしたIT専門家です。しかし、地元の人は坂田さんがIT専門家とは知りません。それは、ITに詳しいとは限らない中小企業の会員を相手にするときには、相手の目線で、わかりやすい言葉を使って話ができる人だからでしょう。

「本当に詳しい人は、決して難しい言葉を使いません。中途半端に知っている人ほど、専門的な言葉を使いたいだけ。それに、IT技術を使うのが目的ではなくて、それを使って業務に何らかの効果をもたらすのが目的だから、技術の言葉なんて関係ないんです。いくら投資したら、いくら効果がでるかを説明すれば、経営者は可か不可かを判断してくれますから」とおっしゃる坂田さんは、実はある役割を担っています。

    岸和田食料品小売業協同組合

岸和田には、昭和43年に設立された岸和田食料品小売業協同組合という組織があります。これは、それまでの公設市場とミニスーパー(八百屋のスーパー形態)が新たな活動を指してラッコチェーンとして生まれ変わったもので、市内の11店舗34事業者が加入しています。この組合の事務局は岸和田商工会議所の中にあり、その担当者こそ、岸和田のITキーマンである坂田さんなのです。地元と密着した事業を展開している岸和田商工会議所では、設立から深くかかわった商工会議所の中に事務局を置くことが自然な流れであったことは言うまでもありません。

事務局として協同組合の活動に深くかかわってきた坂田さんには、会員である中小小売業の商店が今後生き残りを図る上で、ITの活用が必要であるという確信がありました。しかしながら、昔ながらの商売を大切に行うことが一番大切という商店主さんに、いきなりITの活用といっても、すんなりと受け入れてもらえるとは思えませんでした。


そんな坂田さんに、ひとつのきっかけが訪れました。中小企業IT化推進協議会が毎年募集する活用支援事業への応募です。
「何かきっかけをつかんでIT化の効果を体感してもらおうと思っていたとき、丁度募集がありました。無理やり引っ張っていくんじゃなくて、必ず効果があると思える事業を提示してポンと背中を押してやれば、自然にIT利用が進むと思っていたので、まずは1も2も無く、応募したんです」

こうして、岸和田食料品小売業協同組合は、平成14年度のIT協活用支援事業に手を挙げたのでした。




さて、こうしてはじまった食料品小売業のIT活用は、いったいどのような分野で、どのように活動が行われたのでしょうか。岸和田のITキーマンとして活躍される坂田さんは、岸和田食料品小売業協同組合の事務局を担当されています。かねてより中小食料品小売業にとって必要だと思っていたIT活用を進めるべく、平成14年度の中小企業IT化推進協議会の活用支援事業に応募しました。今週は、坂田さんが考えるIT活用の具体的な内容をご紹介します。






    食料品小売業で売れている商品

岸和田食料品小売業協同組合(ラッコチェーン)に加盟する商店の多くは、市内の卸業者から同じものを仕入れて販売していました。この図式は、価格競争に参入しにくいという結果をもたらしていました。たとえ価格競争を行ったとしても、自分たちが首を絞めあうだけで、組合員全体にいい結果をもたらすとは思えませんでした。「業務用スーパーや卸直販形態の店舗が生まれ、価格競争では勝てるはずがありません。そんな負け試合には、参入するつもりはありませんでした。」そこで、坂田さんは、それぞれの商店でどんなものが誰に売れているのかを調べてみました。すると、驚くべき結果が出たのです。

「食料品の小売店で食料品を購入する人は、一度には少ししか購入していませんでした。つまり、大きいパックよりも、小分けの商品が売れていたのです。また、安い特売品よりも、高い特選品が売れていました。この結果を見ると、少なくとも小売店で買い物をする家族は、少人数でこまめに買い物をし、安いものではなくて、良いものを購入する傾向があることがわかったのです。」

    それならば、差別化できる商品を

IT協の活用支援事業では、事業者会員が提供するいろいろなサービスを利用することができます。企業の内部業務にかかわるサービスから、営業・販売をサポートするサービスまで、選択肢は多岐に亘りました。こんな中で、坂田さんが選択したのは、商品を全国規模のラインナップから仕入れることができる「フーズインフォマート」のサービスでした。これは、業務店や小売店が魅力的な食材・商材をインターネットで仕入れることができるBtoBのサービスです。

「多量に安い食材を購入するのではなく、少量でいいから他に無い食材を購入したいという消費者のニーズに合うのではないかと思い、このサービスを選びました」という坂田さんは、サービスを選ぶのとあわせて、組合員に対してあるアクションを起こします。

    パソコン操作が必要ですから

それまで各商店の組合窓口は、商店主であるおやじさんが担っていることが殆どでした。パソコンアレルギーの代表的な世代です。これではIT推進や活用だと言っても話が進みません。そこで、坂田さんは、この事業を進める上でどうしても必要だからということで、若い二代目さんを担当者に変えてもらったのでした。

「二代目、三代目の若大将は、今の商店経営に大変な危機感を持っていました。それに、パソコンを操作するとか、仕組みを理解するといったことに、何の抵抗もありませんでした。だから、事業を成功するためには担当者変更がどうしても必要だったのです。今まで培った信用がありますから、どの商店主さんも快く引き受けてくださり、いよいよ活用支援事業への取り組みが始まったのです。」




フーズインフォマートのサービス利用。いったいどのように進んでいったのでしょうか。また、それはフーズインフォマート側にとってどのようなできごとだったのでしょうか。
より魅力的な食料品小売業を目指し始まった共同購入。なんと卸はインターネットの向うにあるマーケットプレイスでした。旧態依然の食料品小売業に危機感を募らせる二代目、三代目を巻き込んで始まったオンライン共同購入は、どのような効果と波紋をもたらしたのでしょうか。







今回、活用支援事業で採用されたサービスは、「フーズ・インフォマート」という名前のeマーケットプレイスです。ちょっとわかりにくいですが、具体的には、食料品に関するインターネット上の一大市場です。参加費を払えば、誰でもそこの商品(食材)を購入することができます。また、売りたい人は、出展料を払えば自分の商材(食材)をずらっと並べることができるのです。

たとえばリアルな市場で食材を探す場合、いくつかのお店でそれぞれ見積りをとらなければなりませんが、そこはIT技術が丁寧にサポートしてくれます。ほしい値段と商品がわかっていれば、いくつかの候補を瞬時に選択し、それぞれの見積りをクリックだけで要求できるのです。あとは返事によって取引を進めるかどうか決めていくだけ。それだけではありません。調達希望条件を登録すれば、それに見合う商材が登録された瞬間に、メールで通知を受け取ることもできるのです。もちろん登録された食材は、全国各地の産地ものなど、自分の地域にしばられることはまったくありません。

    組合でeマーケットプレイスを使う方法

岸和田食料品小売業協同組合は、魅力的な商材を共同購入するために、今回の活用支援サービスに、eマーケットプレイスを選択しました。利用するためには、まずは登録が必要でした。今回の仕掛け人、岸和田商工会議所の坂田さんは、「はじめは組合ということで、手続きが難しいかなと思ったのですが、もともと独自に口座開設ができている団体だったので、スムーズに進めることができました」とおっしゃいます。また、フーズ・インフォマート側も、「組合だからと言うことで、特にほかの業務店さんやスーパーさんと変わることはありませんでした」とのことでした。しかしながら、以前からの仕入先との関係を持った状態で新しい仕入先を増やすことは、大変デリケートな問題です。

また、マーケットプレイス側からすれば、ともすればカタログ的に価格比較のネタに利用され、実際の取引はリアルに行われてしまうことも想定されます。「今までと違って、全国のいろいろな食材があるとか、流通量が多いため価格が安いとか、いろいろなメリットを感じていただける部分に使っていただければいいと思っています。参加することに対して料金をいただくマーケットプレイスですから、そこをどのようにご活用いただくのかはお客様にある程度お任せしております。」とはフーズ・インフォマートの田川課長。この言葉は、サービス開始からわずか6年で5500社の参加企業を擁する日本最大の食品BtoBサイトへと成長した実績が言わしめたものなのでしょう。

    フーズ・インフォマートでは

実際に、地域内の卸からの仕入れを行ってきた組合員の目に、全国規模のマーケットプレイスはどのように映ったのでしょうか。

「まず驚いたのは、レジ袋の価格でした。今までの仕入れ価格と比べ数分の一。思わず地元のほかの店にも紹介しました」と言われるぐらい、全国規模で流通する商材については価格メリットに目を奪われました。次に、全国の色々な食材が手に入ること。少量の良い品物を求めるお客様にアピールできそうな品物があったのです。さて、共同組合では実際の商品仕入れに挑戦していきました。




いよいよ具体的に動き出したeマーケットプレイスでの共同仕入れ。岸和田食料品小売業協同組合での取り組みは、どのようなものだったのでしょうか。






    夏の共同購入商品は「そうめん」

ラッコチェーン(岸和田食料品小売業協同組合)では、年に6回、共同仕入れによる大売出しを行っています。毎回、1ヶ月前から日程や内容を詰め、チラシや調達の手配をしているのです。昨夏、大売出しの目玉商品として、マーケットプレイスで「そうめん」を仕入れようと考えました。
商工会議所の担当として事務局を引き受けている坂田さんは、早速フーズ・インフォマートのサービスでそうめんを探しました。「産地の卸から、驚くほど安く良い品質のそうめんが購入できることがわかったので、つい地元の卸に一声掛けてからと思い、その話をしたところ・・・」結果的には、地元の卸が直接その産地卸から仕入れ、マーケットプレイスよりも安く購入することになったのでした。しかし、このことをフーズ・インフォマートの田川課長は「お客様が良い結果を得ることができたのは、うちのマーケットプレイスにご参加いただいたからこそですので、まったく問題ありません。もちろん、マーケットプレイスでお取引頂けなかったのは残念ですが、ご参加頂くことの方が大切と考えております。」


    冬の共同購入は「魚沼産のお米」

次に、坂田さんが考えた共同購入食材は「お米」です。それも、単なるお米ではありません。いまやプレミアとも言える「魚沼産コシヒカリ」100%のお米です。お米です。坂田さんは、イベント用に子袋と仕入れ、共同購入用に標準は5キロの袋を仕入れ。また各店の周りの所帯の人数により2キロ・3キロの仕入れもしました。いずれも、産地と密接に結びついているマーケットプレイスならではの品・価格でした。

「マーケットプレイスを利用して一番良かった点は、今まで手に入らなかった食品が手に入るようになったことです。」とは、協同組合の皆さんの声です。今では共同購入だけでなく、それぞれの商店がそれぞれに個性のある商材を手に入れるため、マーケットプレイスをチェックするようになりました。
もちろん、そうして仕掛けた大売出しが、消費者に支持されたのは言うまでもありませんでした。

    自然にIT活用を進めていくこと

はじめは、コンピュータ利用そのものにアレルギーのあるおやじさんが参加していた協同組合。しかし、その担当者を二代目、三代目のコンピュータ世代に交代し、自然にコンピュータ活用が進むためにeマーケットプレイスでの仕入れという具体的な課題を「活用支援事業」という形で取り入れた商工会議所の坂田さん。このキーマン坂田さんの取り組みこそ、自然にIT利用が進むためにはどうしたらいいのかという一つの具体的なヒントを与えてくれます。

それは、普段から会員と同じ目線で業務をこなしてきたIT専門家坂田さんに寄せる、会員の厚い信頼があってこそ。それこそが、IT化が専門家だけでも、ユーザだけでも進みにくいという現状を逆に表しています。同時に、この事例によって学ぶことは、無理なIT化は続かないということ。業務に密接に関連するところから、一つ一つ確実に進めていかなければ継続は難しいということです。



「まだまだIT活用は始まったばかり。次にどんなことができそうかを色々と検討中です。
いずれにせよ、これからも、自然に確実にIT活用を進めて生きたいと思っています。」

坂田さんの挑戦に今後も注目していきたいと思います。



このページの上に戻る▲