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「おもちゃ全品卸価格でWeb通販。」
      〜世界が相手だ、丸善商店
松屋町のおもちゃ問屋の跡取り息子が始めたインターネット通販。問屋という存在はWebショップでどうなる?と思い詰めるまでもなく、まずは行動ありき!独学一本槍で、Webショップを開こうと、思い立ったのはいいけれど・・・。


    おもちゃ35%以上OFF

  「まいどいらっしゃいませ!」「全商品卸価格で売りまっせ!」「大阪でおもちゃ問屋一筋52年!」「株式会社丸善商店のインターネット支店」

 勇ましいフレーズが踊るおもちゃ専門販売サイトがあります。
2001年の4月オープン以来10万人のお客さまが訪れるという隠れた(?)優良サイトです。「お客様殺到!どうやらネット上では一番安く品揃えが多いようです!」というだけあって、「全商品3 5%以上OFF」という文字通りの卸販売を実施。同業他社の追随を許さない独走の構えです。

 地下鉄松屋町駅1番出口(松屋町の8丁目交差点)にほど近い好立地に建つ、おもちゃの卸問屋・株式会社丸善商店。4代目(次期社長)にあたるのは木原忠司さん(34)。丸善商店のインターネット支店の運営を一手に取り仕切る青年実業家。創業52年になるおもちゃ問屋を受け継ぎながら、同時にインターネット販売という新天地へのチャレンジを果たした勇猛果敢な若武者です。

    軽く決断、意外と難産

 「丸善商店には3年前に入社。それまでは他社に在籍していました。前の会社ではパソコンのスキルはメール程度。10年ほど前に、マルチメディアの社内説明会の講師役のお鉢が回ってきて、上司についてパソコンのことを集中的に勉強しました。それがパソコンとのなれそめです」と語ります。そんな木原さんが、こともあろうに老舗おもちゃ問屋の流通経路を揺るがすようなインターネット販売にこぎ出したのは、いったいどんな理由があったのでしょう。

「入社しても暇でね。毎日本ばかり読んでいました。おもちゃ屋というのは冬場が暇な商売です。営業に出なあかんかな、とも思いましたが効率悪そうだし。もともと営業マンだったので、同じような苦労はしたくないなと。そこで“話題のネットで販売をやってみようか”と思いついた」のがきっかけだそうです。2000年の10月から準備をスタート。インターネット販売を始めていた高校時代の友人にアドバイスを受けたり、前職時代の上司にはパソコントラブルに対処してもらったりしながら、なんと独学でHPづくりを進めていきました。
「これが、思ったよりはるかに難事業でして・・・」社会人を経て、一時は海外の大学に留学したという学究肌の横顔も持ち合わせている木原さん。かつて、未来予想図として語られてきた夢のインターネットワールド。その大海原に自ら出航することの大変さを身にしみて実感したそうです。




艱難辛苦の末、どうにかこうにかWebショップオープンにこぎつけた、松屋町のおもちゃ問屋の跡取り息子・木原さん。ところがどっこい、慣れない商品写真の撮影やら整理やらで、サイトづくりはついつい深夜に・・・。家に帰れないよー(といっても店舗の上階が妻子の待つマイホームなんですけれど)。






    商品写真の整理に悲鳴

 思ったより難産、というのはどんなことだったのでしょうか。
「おもちゃというのは非常にこまごましています。アイテム数で今1400点ほど商品があります。スタート時は商品数500点でした。しかし写真は1商品につき4〜5枚撮りますから、その写真だけで何千カットにも及びます。そこからベストな写真を選び、品名や値段をつけてHPに書き込んでいくわけです。この、HP用写真データの制作作業に毎晩2時3時、ひどいときは朝まで残業して当たっていました」。

商品の入れ替えや追加はしょっちゅう。その度ごとに、写真データを管理することの大変さ。そればかりか、デザインやプログラムのことも、独学でトライして行くわけですから、壁にはしょっちゅう突き当たります。
「独力でHPを制作・運営することは無謀なことだったのかと落ち込んだこともあります。それに」と木原さんは続けます。「開始した4月はたった1,000円の売上でした。それも知り合いがお情けで買ってくれただけ。こんなに苦労してこれだけの報いか。出るのはため息ばかりでした」。

じつは編集者は、丸善商店のHPを1年以上前からチェックしていましたが、当初は素人が創っているんだなとハッキリ分かるデザインセンスでした。

    システム化で圧倒的時間短縮

 しかし、ここ数ヶ月、みるみるHPの構成がしっかりしたものに進化してきました。取扱いサービスもクレジットカード利用開始や送料の改定、商品代引払手数料の引き下げなど、矢継ぎ早に新メニューを追加。格段の成長を遂げているのです。それにはどんな秘密が隠されているのでしょう。
「まず、多大な人力が必要だった商品写真管理をシステム化しようと決心しました。現在はエクセルで表をつくり、エクセルで商品の管理をして、HPに連動させるようにしています。エクセルを書き換えればCGIで商品が書き替わるようにプログラムを組みました。システムは知り合いのプロバイダ運営会社に頼んで創ってもらいました。」なにしろ、おもちゃというジャンルは、制作者が面倒だと思うと売れない商品なのだそうです。根気がいります。手抜きせず、「こんな在庫品さばけないだろうな」と思うような商品も徹底的に全部載せるようにしているそうです。そのためには、効率的で正確に作動する商品写真管理システムが絶大な威力を発揮してくれたのです。さらに、この業界のトップランナーで居続けるための、新サービスの充実。HPを見映えで評価するのではなく、お客さまへのサービスの内容、見やすく探しやすく注文しやすいサイトづくりへのこだわり。それが、ここ数ヶ月のサイト内容の充実に、反映されているのです。




持ち前の、こうと決めたら譲らない性格。それゆえ、Webショップも誕生初期のたどたどしさはどこへやら。次から次へと進化をはたし、ついに、商品写真管理システムをカスタムメイド。松屋町のおもちゃ問屋の若獅子・木原さんのバイタリティはスゴイ。






    骨を折ることは結局近道

 ネットショップのオーナー(キーマン)自らが、自分でWebサイトを構築し、運営する。一見すると回り道に思えるこの方法も、木原さんに言わせれば、「自分で残業に次ぐ残業を経て汗を流したからこそ、サイトの使い勝手にとことんこだわれるようになった」そうです。

「HPはプロが創るとキレイですが、シンプルに“売る”ということに特化したHPは必ずしもキレイがベストではありません。卸売価格であることがはっきり伝わるデザイン。商品が選びやすいこと。店の信用やサービスがハッキリ伝わること。写真は美しく、説明は簡潔に、商品のページは軽く動いてすぐに出るように。」読者にとって当たり前のことを、当たり前に追求していくことが、オーナー自らサイトづくりを経験することで、見えてきた。木原さんが苦心談を通して伝えたいのは、そんな真実ではないでしょうか。
「最初からシステムに頼らず、自力で悪戦苦闘したのが奏功しました。当サイトの制作はイメージ主体に行っても売りに徹していないとお客さまがつかなかったと思います。

    ネットで街が活気づく?

「これからWebショップを始めようとする方をおじけづかせようなんてわけじゃないんです。なにも敷居は高いことありませんよ。使っているソフトはホームページビルダー。スタート時の費用は、レンタルサーバー代金、数千円。最低限の出費です。実際に卸問屋を営業してきた50余年の信用と実績があるから、必要なのは最低限のWeb投資と、あとは根気だけ。私でもできたんだから、誰にだってできるチャンスはありますよ。」

2002年になってヒット数は飛躍的に伸びました。クリック数は1日300〜400。2002 年の4月には就職していた弟が帰ってきてくれました。「これまでは商品受発注とHP メンテナンスを私1人でやっていたのですが、弟が商品受発注を担当し、私がHP管理をしています。」弟の人件費がWeb通販の売上で捻出できるメドがついたからだそうです。「売上に占めるネット関係の売上構成比は、店頭売り・HPサイト内での販売が50%、50%になっています。」しかも、面白いことに、Web上で発信する商品情報、店舗情報がWebの中だけで完結するものでないということを、この頃ひしひしと実感するようになったそうです。
「ネットによって店舗の認知が進んでおり、まずネットで所在地を探し出して、それからご来店する方が急増しています。当店の商品やら所在地をプリントアウトして持参して来られるので従来の仕入れ層とはハッキリ区別できます。ネットはリアル店舗への行動を阻害するなどと言われてきましたが、むしろ、ネットで見て松屋町を買い物歩きする人が増えていると思うと、松屋町全体への波及効果は相当なものがあると思います。」見逃すことのできない新しい買い物動線は、クリック&モルタルの効果として注目に値しそうです。




労を惜しんで、成果が得られるはずがない。Webショップづくり試行錯誤のすべてを糧に、お客さんが本当に使いやすいサイトを形作っていく、松屋町のおもちゃ問屋の若大将・木原さん。人と違う視線の先に写るものは、どんな肥沃な市場なのか。






    あの手この手奥の手色々

 販売されているおもちゃの単価は安いんですが、ロット数が結構多いですね。どんな方が買ってるんですか。
「保育園・幼稚園のバザーの景品や、学園祭の模擬店などに需要が多いです。ほかには企業イベントに大口注文を頂いたり、レストランチェーンがお子様ランチの景品に大口購入頂いたり。顧客別にみると、商店様による商品仕入れが1/3、バザーが2/3、残り数%がマニアです。」また、「ホームページ販売は、在庫を持たなくていいのがメリットですね。取り寄せでもメーカーに注文して、翌日には着荷(ちゃっか)するのでお客さまへの発送でタイムロスが出ることもありません。それにホームページなら地代が要らないのが大きい」そうです。そのぶん、新規参入も障壁が低いのがW eb通販の世界。「当社の場合は昔の創業時の店舗写真を掲載し、無形の信用をアピールしています。」

今後は同業他社の参入も盛んになるでしょうから、独自性のアピールが大切なポイントになってきますね。
「色々、他社と違うコンテンツ創りを模索しています。例えば、蔵出しというコンテンツ。これは当社の倉庫の奥の奥に眠っていた時代物の在庫品を白日の下にさらす企画。もし、お宝的な価値があるものなら、オークション方式で販売するというのも手だなと思っています。」また、短期間での飛躍的なアクセス数向上と、おもちゃ35%OFFという希少性から、超大手ショッピングモールからお誘いもあるそうです。「楽天市場の説明会に参加したところ、ぜひ出店しないかと誘われ交渉中です。出店料が5万円かかりますが、集客力やシステム開発費用がいらないメリットを考えると、当社にとって5万円は割安です。出店すべきかどうか、戦略を練っています。」


    ホップ、ステップ、世界へ

 また、松屋町から、大阪圏、関西圏とインターネットで着実に商圏を広げてきた木原さんは、蔵出しで全国規模のお客さんが注目し、市場性があることを痛感しているそうです。その延長線上に、世界市場があります。
「今、英語版ホームページを創っています。英語サイトは日本という国民性をアピールするため、ニッポントーイという名称で情報発信します。海外は日本のキャラクター玩具に高い関心があり、1回当たりの取引金額が100万円オーダーになることも珍しくありません。海外から英文の問い合わせメールが来るとまさに.comビジネスだなと実感します。」アメリカ留学経験と、現地で培ってきた人脈が、大きく花開きそうですね。
「そうですね、単品だと輸送経費だけで赤字ですのでコンテナで大量に輸送し、倉庫に在庫させるなど国内のノウハウとは違った方法論を編み出さなければなりません。クレジット決済やケース単位の注文に対応するなど、ワールドワイドな市場を背景に、一桁大きなビジネスを展開していこうと思っています。」

 ここでも、急がば回れ式の木原さん流人生哲学が垣間見えるような気がしました。社会人を経て、海外への大学留学。考えてみれば、人生の回り道ともとれる行動です。しかし、その間に蓄積してきた英会話、海外とのコネクション創り、チャレンジ精神、それらすべてが、結局大きな成果を生む原資となっているのです。
「アクセス数はいまだに毎月上昇中です。海外取引が軌道に乗ると、この数ももっと増えるはずです。」モニターを見つめる木原さんの視線は、太平洋の彼方に注がれています。松屋町から全国市場へ。日本から海外市場へ。夢は世界ショップです。


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