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「工場仲間が、直接
   お客様の開拓に乗り出した!」

      〜異業種が切磋琢磨する、西淀川経営改善研究会〜
乾ききった雑巾をさらに絞ろうという製造界の合理化。しかし、モノづくりに誇りと生きる糧を求める経営者は、いつまでも現状を嘆くばかりじゃない。異業種が集まり、ASPサービスにより新規顧客の開拓に乗り出した好例が、西淀川にあるらしいのです。「コレだ!」とばかり、さっそく取材してきました!


    ものづくりの有志が集う勉強会

 阪神工業地帯の中核として知られる工業の街、西淀川区。明治以降、100年に及ぶ歴史の中でさまざまな業種が集まり、独自の技術を生み出し、地域全体が一つの技能集団となっています。
大阪市24区の製造品出荷額等の比較では第2位、金属製品・一般機械器具部門では堂々第1位。そんな「ものづくり」の街に、西淀川経営改善研究会(略称N.K.K)を訪ねました。

代表の三木繁親さんは、各種樹脂型を製造する(株)三木製作所の代表取締役でもあります。
「N.K.Kは1984年に大商西淀川支部のバックアップを受けて設立されました。初代会長はなにを隠そう私の父。当時はまだ景気が良かったんですが、大商さんからはTQCなど経営改善の勉強会をしませんかと勧められ、有志が集まって発足したんです」。
現在は、異業種のメンバー企業20社が切磋琢磨し合い、個々にレベルアップを図りながらそれぞれの分野でオンリーワン企業を目指しています。

    ASPの実証実験に参加

 その異業種の勉強会が、ASPの実証実験に参加されたのは、どんなきっかけでしょうか。
「大商がインターネット接続サービス“ビジネス・インフォマート・大商”というプロバイダ事業を始めた1997年頃、N.K.Kもプロバイダを使ったりホームページを立ち上げたりするのに大商のお世話になりました。そんな経緯があったので、このほど行われたASPの実証実験に際しても声を掛けてもらい、運よく参加申請が認められました」。

ASP実証実験は、大阪府中小企業IT化推進協議会が行っています。昨秋1 0月9日に大阪府産業創造館にてASP事業者説明会を開き、11月19日にはOBP の富士通関西ラボラトリーにて実証実験企業を交えた懇親会が開催されました。
「私どもN.K.Kも参加し、中小企業が抱えている経営上の悩みや問題を解決するためのASPの導入事例や、今後の方向性などについての情報を聞いてきました」。
そこで、ASPという言葉に初めて接し、ASPには業務系とインターネット系があることを知ったそうです。
「給与計算や営業管理など待機業務系のサービスが多い中で、インターネット系の“メールステーション”が、自分達の身の丈に合っているのではと意見がまとまりました」。
じつは、すでにホームページを作り情報発信をしていましたが、それだけでは何か閉塞感が漂っていたそうです。
「メールを使って情報発信して新規顧客を取り込むことができそうだ。これをやってみよう」とメンバーの意見が一致し、やらせてもらうことになりました。




N.K.Kのメンバーがやろうと決めたのは、3つのメニュー。
(1)メールステーション
(2)eビジネス研鑽会
(3)ログ解析。

この内容に決めた理由、そして成果やいかに?






    新しいお客様づくりの方法を学びたい

 今までにないメール配信サービスだったからです。なかでも新規顧客獲得法を教えてくれるというので決めました」とN.K.K代表の三木繁親さんはおっしゃいます。
新しいお客様づくりの方法!具体的にどんな内容だったのでしょうか?
「『5段階自動追客法』という自動メール配信のシステムがあり、それを使うと新規顧客の獲得ができるというものです。しかし、そのシステムよりも大切なのはメールの中身。『どんなメールを・どんな人に・どんなタイミングで』送ればいいのか。私たちものづくりのプロは営業のプロてはありませんので、そこが一番知りたかった。そのノウハウは、“eビジネス研鑽会”を通して教えてもらいました」。

“eビジネス研鑽会”の講師は(株)IT総合研究所の坪内さん。N.K.Kの受講メンバーはパソコンを業務活用している5社(5人)。講習は4回に及んだそうです。その内容はどんなものだったのでしょう?

    HPの読者を把握し、それに合った情報提供を

「一言でいえば、自社ホームページの集客数アップの方法です。具体的には“ログ解析”サービスを利用し、読者層をつかみそのニーズに対応したホームページにするということでした。そして、有名ポータルサイトへの登録方法から始まり、検索で上位表示される方法を教わりました」。
なるほど、誰もが知りたいと思っているツボを押さえていますね。
「その上で“メールステーション”を有効活用する方法を学びました。顧客を囲い込み、フォローをまめにすること。一斉配信を利用し、効率的にお客様づくりをすることです」。

 会社に戻り実際にやっていると、色々疑問に直面すると思いますが、どう乗り越えたんですか?
「メンバーのの中に若くてパソコンに詳しい村尾さんがいまして。彼にレクチャーを受けました。ログ解析をするためには各社のホームページにログ解析のソースコードを書き込まなければなりません。壁に当たると村尾さんに『一杯おごるから』と個人相談をお願いしてました(笑)」。

 自社のホームページを持っている会社でも、どんな読者が見に来ているのか把握している会社は多くありません。
「当社も最初は誰に読まれているのか見当もつきませんでした。しかし、“ログ解析”をやってみると得意先の一つである建材メーカーが多いことが分かった。私はホームページの読者層が分かるなんて知らなかったものですから、びっくりするやら感心するやら。このように読者層が明確になると、それに合わせて情報発信の内容を最適化しないといけないな、と気づきますね」。




N.K.Kでは、IT化に積極的な5社が集まりホームページビルダーの使い方勉強会(分科会)を月2回行っています。
こうした活動を通して、パソコン活用技術の底上げを図っています。では、ネット上で具体的な何を「売り」にしようとしているのでしょうか?






    技術をカタチにして見せなければダメだ

 N.K.K代表の三木繁親さんに聞けば、「実証実験への参加は昨秋11月から始まって半年経過しました。実績は、今、メンバー各社のホームページの更新を始めているところです」とのこと。
ところで“eビジネス研鑽会”での習得内容をお聞きしての質問なんですが、“メールステーション”で商品情報を発信する際、N.K.Kのみなさんとしてはどんな商品でエンドユーザーにアピールするんでしょうか?
「その一つの目標が、各社必ず一つは『フロント商品』を創ろう!というものです」。
え?フロント商品?聞き慣れない言葉ですが…。
「その説明をする前に、我々製造メーカーが置かれている状況をちょっとお話ししましょう。今までは直接的なBtoBの仕事が全てでした。親会社→図面指定→納期指定→価格指定→下請け製造という仕事の流れが固まっていました。今後はそのような親会社丸抱えの系列発注というものも減少し、下請け製造メーカーも自分達で販路を開拓しなければ生き残れません。親会社もメーカーであり、モノづくりのプロがモノづくりのプロと商売することほど難しいことはありません。原価が分かっているわけですから、労賃の買いたたきにつながるわけです」。

うーん、状況はどこも同じように厳しいですね。
「そんな中、売りものは『技術力』だと下請けのみなさんはおっしゃる。でも、カタチになる最終製品がない。ないから『技術力』も伝わらない。仕事も増えない。そこで、我々が考えたのは『フロント商品』の製作です。これは各社の技術力を活かしたら、どんな最終商品ができるか、カタチでアピールするものです。価格があまり高くなりすぎてもいけませんので3000円くらいの商品をめやすに各社開発に入りました。この価格帯ならインターネット上で十分購買意欲の上がる価格です」。

    キラリ光る『フロント商品』がぞくぞくと

 たとえば、どんな『フロント商品』がありますか?
「当社は樹脂製金型を造っています。複雑な立体模様を3D形成で造り出す技術があります。そこでこれを活かして造ったのが、立体地形図。取引先の社長から、すでに淡路島の立体地形図を受注納品しました。出身学校に寄贈するそうです」。

 会員企業の面々も熱心で、金属加工の(株)小川工業所は厚さ9mmと通常の4倍も分厚く、熱の通りが均一で調理素材を圧倒的においしくするバーベキュー用鉄板を開発。「これが欲しかった」とばかりキャンプ用品メーカーやログハウスメーカーからすでに受注をとっているそうです。また製缶加工の末広工業(株)は、水でも油にまみれていても何でも吸えるサイクロン方式(気流を渦巻き状にする吸引方式)の掃除機を開発。(株)富士製罐工場では学生時代の思い出を詰められる缶詰を企画。思い出を詰めた缶があれば、卒業記念品にもなり、同窓会の出席率もアップ。同窓会に持参してみんなで開けようと、小学校に売り込みをかけています。ツーコーパッキング工業(株)はゴムパッキンの製造会社なんですが、パッキンを型抜きしたあとのゴムの残りくずが非常に多く、廃棄にかかる費用もバカになりません。そこで廃材をさらに小さく加工し、洗濯機の震動防止用など小口需要を開拓しようとしています。




N.K.Kメンバーの『技術力』を結晶させた『フロント商品』。たしかに三木繁親さんにお見せいただいた立体地形図は、山岳の起伏がとてもリアルで興味をそそられました。今までにない商品だけに、今後の展開がとても楽しみです。
『技術力』をカタチにした『フロント商品』を通じて、WebでBtoCの領域に踏み出そうとする西淀川経営改善研究会(略称N.K.K)。大阪府中小企業IT化推進協議会のASPの実証実験に参加し、研鑽を積んだ成果が、早くも日の目を見そうです。1社ではくじけそうになる未開拓分野へのチャレンジを支えたのは、いったい何?






    仲間がいるから楽しんで挑戦できる

 しかし、N.K.Kの会員のみなさんには、ヤル気が満ちていますね。
N.K.K代表の三木繁親さんは謙遜でも自慢でもなく、ごく自然に答えてくれました。
「これらは1社で考えるとなかなかうまく運びません。商品開発のアイデア改良しかり、製造上の工夫しかり、売り方のアドバイスしかり。当社の立体地形図もなかなか売り方が思い浮かびませんでした。そんなときN.K.Kのメンバーから『日本100名山っていうのがあるよ』とか、『四国88カ所の遍路道を刻んだらどうや?御利益あるんちゃうか?』とか、さまざまなアイデアをもらった。勉強会には会員同士の違う視点で一つのテーマを検証するという大きな意義があります」。
そうか。受験勉強も一人では怠けてしまうけれど、司法試験の勉強グループなど、仲間がいるから頑張れるということが確かにある。
「N.K.Kには機械、プレス加工、切削加工など違う分野のスペシャリストが集まっています。新技術とは異なる組合せですから、我々のグループは新商品、新技術を生み出すためには一番有利な仲間だと思うんです」。


    さぁ、いよいよBtoCに向けてスタート

 N.K.Kでは年一回、多業種型展示商談会「いきいきおおさか 中小企業フェスタ」に出展しているそうです。
「通算6年目になります。今年は2ブース借りようと思っています。1ブースは、各社のフロント商品の展示にあてようと思っています」。こうした場で集めたメールアドレスは宝物。「このようなアドレスに“メールステーション”を通じて、直接情報発信させていただくつもりです。また、各社の新商品が出た場合にも、随時メールでお知らせしたいですね」。
メールステーションの運営に要する費用は1社あたり月1万円。今回の実証実験が終了後も、リーズナブルな経費で継続することができそうなのは、ASPならでは。
「直接お客様に販売しても、売上貢献度は微々たるもの。しかし1 %のものが10%になれば総売上が10%増えます。独力で得る10%には何物にも代えがたい価値がありますよ」。


「中国などの安い人件費に勝っていくには、スピードとアイデアだと思いますね。機械化による納期の短縮。そして、人より先を行くアイデア。一人でも多くのお客様にアイデアの輪を広げていこうと思います」。
N.K.K代表・三木繁親さんの前向きな姿勢が印象的でした。



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